僕は1994年に日立 中央研究所 超高速プロセッサ部に入ったが、次の年には超高速プロセッサ部は無くなった。プロセッサを作るやつは「犯罪者」であり受刑者のような雰囲気だったのは確かだ。そして僕はIBMのCPUを買うための仕事にとりかかった。
1996年、大学などの研究機関向けにVDECが設立されLSIの試作、研究が行えるようになったようです。VDECの年報、1996年と1997年を読みました。東大のプロセッサのための研究が、いくつか掲載されています。 この頃は、パイプライン段数を増やす、スーパーパイプラインという思想で、周波数を上げる技術の研究が盛んだったようです。加算器をパイプライン化する研究や、加算する値によって計算時間が異なることを利用し、1~3サイクルで加算をする「疑似非同期」というアイディアがあったようです。
僕のICF3-Vの「疑似パイプライン」は面積当たりの性能を向上させるためパイプライン段数を削減しつつ、パイプライン効果を得る方法なのだが、それは、おいておいて、実は「疑似非同期」も検討していた。
東大の疑似非同期の対象は加算器で、入力値によって変化する終了検出が必要だった。僕の疑似非同期は、除算が対象。除算支援ハードのために全体の周波数が落ちているのだ。除算演算をする場合、32bitの2命令を1サイクルとするみたいな、決まり事を作るだけ。値による終了検出はしないので、簡単。除算の性能が下がるが、決まり事を作るだけでハードウェアの変更の必要はない。同一のハードで、除算の性能が下がっても、周波数を上げたい場合、ソフトウェアのほうで対応する。
VDECの年報は基本的には教育を含め、学生が短期間に試作しているものだが、中には、興味あるものもあるかもしれませんね。 1998年以降も、ちょっとみてみようかな。